通貨とは何か。

世界が現金化する以前の世界では物資は物々交換かもしくは最初から帳簿処理されていました。

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500円硬貨は1982年に登場。世界的にみて高額な貨幣です。他国ではこの金額に相当する買い物ではよれよれになった紙幣を使う(日本では500円紙幣は1985年に製造停止)。この500円玉が登場する以前の世界はどうだったか?

なんと修学旅行では「お米」を持参していったのです。宿に泊まり晩ご飯と朝ご飯を調達するときに自らが持参した米を使う。江戸時代の木賃宿と同じシステムであった。中学高校の合宿でもそうである。登山やキャンプでは炊飯をしますが、その手間を外注するようなシステムである。

米の流通は1960年代まで配給制度下にあった。配給に必要となる米穀配給通帳の発行が停止されたのは1981年である。米穀配給制度の停止と日常生活における通貨の多用(コンビニ等の利用)は同時期に生起したといえる。その変化に対応したものが500円玉だったというわけだ。現代日本社会は昔から現在の構造をとってたわけではないのである。

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通貨を多用する以前の世界。お米以外の衣類はどうしたのでしょう? これも自作であった。祖母が反物を使って家族分の衣類を製作していたことは以前記しましたが、そもそも流通経路となるデパートや衣類専門店の店数が少なかった。商業経済ではなかった。第一次第二次産業の従事者は1970年代で50%以上(1980年でも45%)。これらは商品を自作する。地域社会が存在し面識のある枠内では物々交換的に商品が流通する。その枠を越える範囲では帳簿処理である。ほしいものがあれば他人に頼れば手に入る。「◯◯さんお願いします」で入手できてしまうのだ。「◯◯さんは私の友だちだからなあ」で済んでしまうのである。

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他国では現在でも人々は知人枠の中で行動する。田舎の人々の行動で「どこ中? なに部?」から始まる会話が揶揄されますが米国ではおおっぴらにそうである(この関係を維持するためにパーティが多用されます)。周囲に壁を作り閉鎖したコミュニティまで作ろうとする。人間をコミュニティ内外で厳格に区分けしてしまうのだ。

これにはどうやら貨幣(通貨)との関連がある。発行元が確定し偽造の不安のない通貨の大量流通が日本人の心性を確立した。通貨発行元の保証がない社会ではクレジットカードを使う。500円玉かクレジットカードかである。日本は前者を採用したわけだ。世界でも特異な社会といえる。クレジットカードを多用する場合、通貨発行権に相当するものは一部外注され、それは民間企業の手に渡るのである。

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消えてしまったものがある。自給自足的判断だ。あるいは物々交換的判断である。

これは本当に消えてしまったのだろうか?

この判断が「消える」ことはあるのだろうか?

自分の隣に口を利いてくれる個体(人間あるいは機械)が存在するのなら、ひとはそれを利用してしまうのではないか? 世界が現金化したなら尚更そうではないか? つまり交換に値するものとして現金どうしを流通するのではないか? あるいは現金に相当する何かを。

レヴィ・ストロースは「交換」を人間が行う本質的な行為であると判断しましたが、その交換は第一次第二次産業をベースとしてのみでなく、第三次産業が主となったいまでも人間は同様に実施しているのではないか? 何らかの交換抜きでは人間は社会を構成できないのではないか(人々が交換を行う範囲が社会である)。

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経済学は明示された通貨の流通範囲を計量する。

社会学は通貨によって明示されていないサービス、物々交換や個体間の会話や契約のあり方を対象とする。

経済学の範囲からはカウントできない関係がある。過去では地域社会(村社会)の関係だ。グローバリズムの視点から抜け落ちてしまう関係である。

しかし、抜け落ちるのはそれだけだろうか? もしかして新たな関係が生起しそれは視覚化されてはいないのではないか?

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第三次産業における物々交換に相当するものとは何だろう?

よく言われるのは知識である。無形という意味で他の交換対象と比較される。文学とか映像とか学校の設立とかである。しかしそのような簡単な視覚化は可能だろうか? その判断は第一次・第二次を基準にして交換対象を変えただけではないか?

その判断なら「村社会」で記述は終わってしまう。深刻な社会構造の変化はない。しかしグローバリズムである。電機産業も海外での生産や輸入がなくては成り立たない。第二次産業は消えてしまい第三次産業だけ残っている。この形態は村ではない。しかし組織として定義されるのだ。

この形態は何なのだろう? この形態でも通貨は流通している。というより通貨がメインで組織を支えているのである。会社組織とは通帳を共通のものとする「法人」組織なのである。