忘れ去られてしまうのか? 傑作マンガ『パチスロひとり旅』。主人公が発見する自身限りの必殺技とは。

初巻がコンビニに置いてあった時の状況をみて驚愕した「パチスロをしない人でも絶対ためになります!」ためになる!?
ためになるってなんだ? 澱んだ空気の中でひたすらダイヤルを操作するだけの遊び。非生産性の極致。労働者の上前を撥ね駅前の景観を汚しあるいは中毒になるまでギャンブル性の高い遊びの中にどんな教訓が詰まってるというのか?
買って読んで驚いた。おそらく著者の知能指数は140前後、数百人の人間を並べてトップに位置するそれである。
生徒会長となり、六大学に進学し、卒業後は一流証券会社に勤務。入社1年で地域の売上トップに上り詰める。おそろしくできる人間なのだ。
そんな彼がどうして600万円以上の借金を重ね、路上生活(車上生活)しながら日本各地のパチンコ店に朝いちで並んで通い詰め夜中まで打ち続ける生活になるのか。
まあそこには幾十もの運命のいたずらと「容易に他者を信じてしまう」彼自身の純粋すぎる弱点があるわけですが。

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入社後の過酷すぎる生活。同期入社は瞬時に半分に削られる。ノルマはきついのだ。日々の営業の結果が壁にグラフとして貼り出される。弱者は圧力を受けただ飯食らいとして排除の圧力を受ける。仲間と公園で並んで缶コーヒーを飲みながら愚痴る日々だ。明日など見えない。営業とは何をしたらいいのかわからないのだ。
そのまま日比谷の図書館へ。完全にさぼりムードである。
「このままうまく行かなきゃやめる」「やめてやる」「しかし出来ずにやめるのは惜しい・・!」
そこら中に並んでる本を読み漁るうちに彼は「人名録」に至るのだ。
人名録にはその地域ごとの有名人、権力者、土地持ち、商店工場の経営者等、明白に金を持っているであろう人々の情報が、リストアップされていたのである(※世界がIT化する以前の話です。1990年代後半)。

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彼はその情報をノートに書き留め、早速訪問する。家の中はみるからにコストがかけられ、金持ちだ。以前は一発でいかなかった営業が即決まる。楽勝だ。それは驚きの速度だった。
そこから先は勝利街道だった。常に先頭を走り続けた。支店の成績も伸びていた。彼は自身だけの必殺技を見つけたのだ。
マキバオーで言うところのマスタングスペシャルです。その、開眼する瞬間が素晴らしいんだなあ!!
※種々の転職を繰り返し何もかもなくして最後に彼がすがるのが、土日に遊んでおりそこそこ勝てていたパチスロだった。遊びでしてたものがひとを生かすのである。その「発見」、会社の中で成果を出してもまるまる奪われる、そんな中で一人で活動でき成果を自身のものとして回収できるパチスロとの出会いは、単純にその遊戯を否定する私においても感動的なそれだった。